AETHER

  ブラジルのプログレッシヴ・ロック・グループ「AETHER」。 74 年結成の大ベテラン。作品は二枚。

 Visions

 No Image
Vinicius Brazil acoustic & electric & synth guitars
Alberto Curi keyboards, vocals
Fernando Carvalbo electric & synth bass
Brandon Ramos drums
guest:
Eduardo Campos piano solo & organ on 13
Glauco Fernandes violin solo on 12, 14

  99 年発表の第一作「Visions」。 内容は、歪み/コーラス系によるサスティンを活かしたほんのりブルージーなギターと透明感あるキーボード・サウンドを軸に、緩急の巧みなアンサンブルを操るメロディアスなシンフォニック・ロック。 要は、70 年代中盤の CAMEL をさらにまったりとした音である。 ドラムスのキレは比べるべくもないが、メランコリーとファンタジーの幸せな狭間に咲いた可憐な花であり、癒しや安息を目指す音が真面目に真っ直ぐ紡がれてゆく。 音が組み上がった全体の感じは、THE FLOWER KINGS のロイネ・ストルトの表現に近いような気もする。 オプティミズムやユートピア志向など同年代の縁だろうか。 初々しさ、誠実さなど時とともに色褪せてゆくものを、力まずに繋ぎとめてゆくために、これからもこういう音に耳を傾けてゆきたいです。 甘ったるいだけではなく、敏捷で力強い動きもあります。 後半の組曲は、キーボードによる雄大かつ奥深いサウンドが印象的。 リゲティの「レクイエム」も使われているところなど、「2001 年宇宙の旅」を意識した壮大なドラマがあるようだ。 ヴォーカルもあるが、インストが主。 SAGRADO のキーボーディスト、エレクトリック・ヴァイオリンの名手グラウコ・フェルナンデスがゲスト参加。
  
(RSLN 067)

 Inner Voyages Between Our Shadows

 No Image
Vinicius Brazil guitars
Alberto Curi keyboards
Fernando Carvalbo bass
Mario Leme drums, percussion

  2002 年発表の第二作「Inner Voyages Between Our Shadows」。 メロディアスなギターを中心とした清冽なシンフォニック・ロック。 初めは 10 年位前のオランダや英国のメロディアス・ロック路線的な音という印象を持たれるかもしれないが、聴き進むに連れ、爽やかなサウンドとそこから生まれる知的な気品、さらには安定感ある演奏のおかげで、ぐんぐんイメージがよくなってゆく。 楽曲は自然な語り口でとうとうと流れてゆき、展開には急激な変化はなく、緊張/弛緩といった対比もさほどでない。 基本的に、メロディにのせて、ゆったりミドルテンポで物語を綴ってゆくタイプである。 10 分以上の大作が並ぶにもかかわらず中だるみを感じさせない(ちょっと感じるか?)のは、安定した演奏プラス練りこまれた語り口のおかげだろう。 もっとも、アルバム構成には意外なまでに手が行き届いている。 序盤に涼しげなインストゥルメンタルを繰り広げて、全体の印象を決めて、その後はアンディ・ラティマーを思い出さざるを得ない男性的なヴォーカルも盛り込みつつ、次第にクラシカルなタッチも強めてゆき、ドラマを作ってゆく。 涼感を存分に活かしたメロディアス・ロックという点では、かつての JADIS にも近い感じである。 ジャケットの写真から判断して、メンバーはそれなりのベテランらしい。 サウンドの独特の爽やかさは、他のグループにもいえるのだが、70 年代後半からのフュージョン・ブームを通過していると、こういう音使いがごく普通に出てくるようだ。 もちろん、ラテン圏特有というのも確かだろう。
   主役のギターは、徹底して泣きのロング・トーンで迫る。 エフェクトがやや古めかしくポーランド の ABRAXAS を思わせる演歌っぽい歌い方なのだが、不思議と悪くないのは、メランコリックではあってもブルージーではないため、そして全体のサウンドが爽やかなせいだろう。 キーボードは、当然のごとく透明感あふれるバッキングとクラシカルなソロを披露。 ギターとのフロント・ラインの切り替えも自然である。 大作をなめらかかつ必要十分な起伏をもって流れてゆけるのは、このギターとキーボードの絶妙の配分のおかげでもある。 また、リズムは、この手のグループにしては、出過ぎず引っ込み過ぎずのバランスがいい。
   男性的なヴォイスと叙景的でファンタジック、ゆったりと落ちついたサウンドの質は似ていても、THE FLOWER KINGS ほどはテクニカルなアンサンブルや込み入った音作りにはなっていない。 どちらかといえば、初期の MARILLION のようなハイセンスなネオ・プログレという感じであり、そういったグループの共通祖先の一つである CAMEL をイメージしてもらうとちょうどいいはず。 最終曲は定番「禿山の一夜」。EL&P から、GENESISYESKING CRIMSON も顔をのぞかせるプログレ娯楽大作。 とはいっても、アメリカのグループの作品のように血糖値過剰のハリウッド映画的な面はなく、生真面目に素朴に丹念に物語は綴られる。 だから、幸福感あふれるエンディングがいい余韻を残してくれる。
  
  「Prayer For A New Meeting」(14:00)
  「The Gate」(9:15)
  「Forgiveness」(11:36)
  「Scenes Of Wondering Beyond」(12:06)
  「babel Tower」(7:26)
  「A Night On Bald Mountain」(19:29)
  
(RSLN 068)


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